高知地方裁判所 昭和40年(ケ)39号 決定
以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。
〔決定理由〕<証拠>によれば、本件競売期日において、競売記録を閲覧に供していることは認められるが、閲覧とは別に競買価額の申出を催告した形跡は全く窺えない。のみならず、右中西勇之助審尋の結果によれば、高知地方裁判所執行吏役場においては執行記録の閲覧が、同時に競買の申出の催告をも兼ねる取扱いをしていることが窺えるのである。
かくして、本件競売手続において、独立した競買申出の催告はなされていなかつたものと認められる。
そこで、競売手続において、執行記録の閲覧が同時に競買申出の催告としての効力を有するや否やにつき考察する。
まず、形式的にみると、民事訴訟法六六三条の文言によれば、執行記録を閲覧に供することと、競買価額の申出を催告すべきこととは、「且」の接続詞によつて結ばれているから、それぞれ独立した競売手続を形成する行為であると解される。このことは、同法六六七条一項の第三および第四がそれぞれ別個独立の執行調書の記載要件とされていることからも裏付けられていると解される。
次に、実質的にみると、不動産の競売手続は、裁判所々属の公の執行機関である執行吏(執行官)が主宰するものであつて、競買人として予定されているのは、一部のいわゆる競売ブローカーと目される者のみではなく(もつとも、かような者の競落を否定するものでない。)一般公衆が本来その対象とさるべきものである。
そして、一般公衆がその本来的な対象であることを前提とすると、競売手続は一般規範である法定の手続を履践すべきであつて、一部の特殊の人、所にのみしか通用しない取扱慣行に準拠した手続は、これを知らない一般公衆を害し、ひいては、かような取扱慣行に詳しいいわゆる競売ブローカーの暗躍を助長する結果となり、著しく正義に反することが明らかである。
本件においても、最高価競買人とされている乾秀雄は、同人および前記中西勇之助に対する各審尋の結果ならびに細木歳男作成の証明書と題する書面によつて明らかな如く、いわゆる競売ブローカーであると疑うに足りる者であり、右の取扱慣行にも精通していたことが窺える反面、本件抗告人らがいずれも前記慣行を知悉していたことを窺わせるに足る資料はない。
実質的にみても、右の慣行は、一般性を有しない違法のものであるといわざるを得ない。
以上のとおり、すでに明らかな如く、本件競落許可決定は、民事訴訟法六六三条に違反した手続を前提としてなされたものであり、これを取消さないときは著しく正義に反するので爾余の抗告理由につき、さらに審按するまでもなく、取消を免かれないものといわなければならない。(田村秀作)